XIII サーティーン シーズン1 : 特集

 なんといっても魅力なのは、ストーリー展開の妙。記憶を失った主人公は、自分の正体を探りながら、自分が巻き込まれた陰謀の全貌を究明していく。この2つの謎が、同時進行で解明されていく、二重の謎解きミステリーなのだ。主人公はすべての記憶を失っているが、習得した技術は身体が覚えていて、格闘に優れ、ハッキングの名人でもある。一体彼は何者なのか。彼は大統領暗殺と関係があるようなのだが、この暗殺を企てたのは誰なのか。その目的は何なのか。

 しかも、この2つの謎解きは一筋縄ではいかない。やっと答えに到達したと思ったら、また別の疑惑が生じて……というスリリングな二転三転の展開を見せていく。

 原作は、ベルギーの作家&イラストレーターによる同名グラフィック・ノベル。大人の読者向けに書かれたコミックであるグラフィック・ノベルは、ストーリー面とビジュアル面の双方に優れた名作が多く、映画化された「ウォンテッド」「300/スリーハンドレッド」「ヒストリー・オブ・バイオレンス」なども記憶に新しい。09年3月28日日本公開の話題作「ウォッチメン」も名作グラフィック・ノベルの映画化だ。

 「XIII サーティーン」の原作は、米英ではなくフランス=ベルギーの出版社から刊行されている。アメリカを舞台にしたヨーロッパ発の作品、どんなテイストなのか興味が募る。また、“記憶喪失の特殊工作員”というモチーフは、02年の「ボーン・アイデンティティー」から始まった「ボーン」シリーズでも使われているが、本作の原作が刊行されたのは84年。大ヒットした「ボーン」シリーズより18年も先に誕生しているのだ。ちなみに原作の最新版は07年に刊行されているが、まだ完結していない模様。

 中心人物を演じるのは、映画でも活躍中の2人。まず主人公の記憶を失った男、サーティーンを演じるのは「ワールド・トレード・センター」のスティーブン・ドーフ。「バック・ビート」「ブレイド」の青春スターだった彼も今や演技派。今後もは、ジョニー・デップ主演の「パブリック・エネミーズ」、カール・アーバン主演の「ブラックウォーター・トランジット」と話題作が続く。

 そして、彼の命を狙う敵役は「デジャヴ」のバル・キルマー。「トップガン」「ドアーズ」などで人気を集めた彼も今やベテラン。近年ではジェームズ・マースデン共演の「狼の街」、ロバート・ダウニー・Jr.共演の「キスキス、バンバン」などで活躍するキルマーが、不敵な悪役ぶりで貫禄を見せる。

 監督は、ジェリー・ブラッカイマー製作総指揮の3つの犯罪サスペンス「CSI」シリーズ、「CSI:科学捜査班」「CSI:マイアミ」「CSI:NY」の監督を多数手がけてきたデュエイン・クラーク。本作でも、「CSI:」に共通する緊迫のサスペンスと、最新技術による科学捜査の実態のリアルな描写で、その演出力を発揮。二転三転する謎解きミステリーに加えて、PCであるページを閲覧しただけでアクセスした場所が判明する監視システムや、神経に作用した特殊な症状を引き起こす薬品などの科学捜査の最新技術が、サスペンスをさらに盛り上げる。

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