マッドメン シーズン1 : インタビュー

 60年代のニューヨークを舞台に、敏腕広告マンたちの熾烈なバトルを通して、嘘と欲望にまみれた人間の本質を描いたヒューマンドラマ「マッドメン」。都内スタジオで行われた本作のアフレコ収録現場を取材した。

 主要キャストの声優陣が勢ぞろいした、緊張感漂うスタジオ内。力のこもったセリフの応酬はもちろん、感情の機微をデリケートに演じ分け、ときには台本の言い回しを臨機応変に変えながら、より一層リアリティある人物像を生み出す現場は、まさにプロ同士の戦場といえる。その中心にいるのが、主人公ドン・ドレイパーの声を担当する山寺宏一だ。

 舞台となる広告会社の有能なクリエイティブ・ディレクターで、良き夫を演じながら外では不倫を重ねる一筋縄ではいかない男、ドンの魅力を山寺にたずねると、「とにかくカッコイイ男。仕事ができるキレ者であると同時に、どこか影があってミステリアス。それにクールで野性味もあふれている……って、本当に僕にないものばかりで、人物としては正反対ですけどね(笑)。決してスーパーヒーローではない、多面的なキャラクターなので難しいですが、その分、やりがいも大きいですよ」

 複雑な人間関係、その裏側にある思惑。ドンを筆頭に、「マッドメン」に登場するキャラクターたちは皆、腹に一物持ったクセ者揃いである。

 「絵に描いたような善人も悪人も登場しないのが、このドラマの一番の魅力。みんな心のどこかで何か抱えているし、まぁ人間って絶対的にそういう存在ですよね。そういう部分を徹底的に掘り下げているから、僕自身、(声を)やればやるほどハマっていくし、見る側も噛めば噛むほど、魅力が味わえる。本物の大人のドラマなんだと思いますし、アメリカで大人気なのもよく分かりますね」

 有名スターが出演しているわけでも、奇抜な仕掛けがあるわけでもない。その見応えあふれる内容とクオリティが評価された「マッドメン」は、第60回エミー賞でドラマシリーズ部門の作品賞他全6部門を受賞する快挙を達成。今年の第61回エミー賞でも、ドラマシリーズ部門最多の16部門にノミネートされている。

 「毎回エミー賞は注目してますよ。ドラマ業界の今がすべてチェックできますからね。もちろんエミー賞受賞作というプレッシャーがないといえば嘘になりますが、そのへんはあまり意識せず……もちろん、自分の吹替えが作品のマイナスになってはいけないという責任感はありますね。あなたの心の隙間を埋めるか、はたまた何かをえぐり出すか。とにかく世界で一番『本音』のドラマだと思うんで、ぜひたくさんの方に楽しんでいただければと思い、毎回、アフレコに臨んでいます」

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