冒険野郎マクガイバー シーズン1 : 特集

手近な物を使って絶対絶命のピンチを一発逆転!

 「冒険野郎マクガイバー」は、1985年9月29日~92年8月8日にかけて米ABCで7シーズン(全139話)放映されたパラマウント制作の冒険活劇ドラマ。日本では88年からTBS系列の火・水曜日のゴールデンタイム映画枠(2時間)で、シーズン1と2から選りすぐりの2話ずつが8回に分けて(計16話)放送された。その後、91年7月からTBS系深夜枠で放送され、根強いファンを増やし、さらにBSのWOWOWやCSのスーパーチャンネルで何度も再放送されている。

 何といってもその魅力は、リチャード・ディーン・アンダーソン演じる主人公である元特殊部隊員マクガイバー(愛称マック)の活躍ぶり。フェニックス財団の契約エージェント(シーズン1こそ、アメリカの諜報機関DXSのエージェントだった)として世界中の悪と闘うのだが、銃火器が嫌いな主人公の愛用の武器はスイス・アーミーナイフ(主にビクトリノックス製“スパルタン”)のみ。物理学や化学など科学全般に幅広い知識を持つこの男はどんな困難に陥っても、手近な物を使って、ピンチを切り抜けるのだ!

 例えば、ペーパークリップを使って核ミサイルの発射を防いだり、チョコバーを使って強酸性の液体の流出を防いだり、カゼ薬のカプセルで手製爆弾を爆発させたり……。しかも、絶体絶命のギリギリのところからまさに“一発逆転”で、やり遂げてしまうから爽快なのだ。このドラマのファンの間で“マクガイバリズム”とたとえられた、マクガイバーならではの手口の鮮やかさ、着想の大胆さは、TVでおなじみの米村傳次郎(でんじろう)先生による理科(科学)実験のように、実に意表をつく。何でもない女性のハンドバッグやごく普通の机の上、冷蔵庫の中から簡単に手に入る、どこにでもあるような手近な物を使って、見るも美事な“奇跡”を起こすのだから、すこぶる楽しいのだ!

 このマックの声を吹替えたのは、ジャッキー・チェンなどの声優でおなじみの石丸博也。マクガイバーに毎回任務を依頼するフェニックス財団の運営部長ピーター・ソーントン(ダナ・エルカー/声:宮川洋一)、お調子者のマックの悪友でパイロットとしても活躍するジャック・ダルトン(ブルース・マッギル/声:内海賢二)、マックに知恵を授けた祖父ハリー・ジャクソン(ジョン・アンダーソン/声:納谷悟朗)といった脇役陣とのコンビネーションも軽妙だった──驚くなかれ、今や大御所の声優ばかりだ。

 さらに、このTVシリーズにはセミ・レギュラー格として、マックを兄のように慕う若い美女ペニー・パーカー(シーズン1の「天使の微笑」以降、全6話出演)が華を添えている。彼女を演じているのは何と、のちに「デスパレートな妻たち」のスーザン役で、数々のドラマ賞を受賞するテリー・ハッチャー(声:岡本麻弥)だ。「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」(97)でボンドガールになる前の、まるで峰不二子のようなお色気を振りまいている。

 「刑事コロンボ」と同様、最終シーズンまで、マクガイバーのファーストネームは伏せられたままで、最後の“最後”に明かされるというお楽しみもある。クリエイターはリー・デビッド・ズロトフ。以前に「探偵レミントン・スティール」(83~)の脚本&制作を手がけた才人。随所にちりばめられた卓抜なユーモアは彼の力に負うところが大きいのかもしれない。

(佐藤睦雄)

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