LOST シーズン6 : インタビュー

■キム・ユンジン(サン)「登場人物のなかで、サンほど大きく変化したキャラクターはいない」

※多少ネタバレあり
――「LOST」はさまざまな点でアメリカドラマの慣例をぶち壊していますが、韓国人カップルをレギュラーで登場させたこともそのひとつですよね。

「その通りだと思う。だって、アメリカ人の字幕嫌いは有名で、マイナーな外国映画ならともかく、TVドラマを字幕でやるなんて前代未聞だもの。あるエピソードなんて、ドラマの半分以上が韓国語で進行する。あのエピソードを撮影しているときは、きっとあとで吹き替えられるんじゃないかと思っていたの。でも、そのままの形で放送されて、しかも、視聴率が落ちなかった。製作総指揮もABCも、本当に大胆な選択をしたと思うわ」

――とはいえ、最初の頃のジンとサンは、ステレオタイプな描かれ方をしていましたよね。亭主関白な夫と従順な妻という、典型的なアジア人夫婦像で。

「うん、パイロット版の脚本を読んだとき、その点は気になった。とくにジンの描写はまずいんじゃないかって思って。それで、すぐにJ・J(・エイブラムス)に連絡したの。すると、J・Jはそれから2時間をかけて、その後のジンとサンの展開について説明をしてくれたの。パイロット版では、アメリカの視聴者にすぐに2人を把握してもらえるように、あえて典型的なアジア人として描いていたの。それは、ジンとサンに限らず、他のキャラクターにしてもそう。ジャックは善良な医者、ケイトは犯罪者、ソーヤーは詐欺師、チャーリーはドラッグ中毒者、というように、すべてのキャラクターがステレオタイプに描かれている。でも、物語が進行するにつれて、それぞれのキャラクターに深みが増していく、というのがJ・Jの狙いだったのよ」

――J・Jが約束した通り、その後のサンは変貌を遂げますよね。

「『LOST』の登場人物のなかで、サンほど大きく変化したキャラクターはいないんじゃないかしら。最初は、臆病で気の弱い主婦だった。常に周囲の目を気にして、カーディガンのボタンも上までしっかりと留めていたし、常に夫の指示に従っていた。それがいまでは、ベンの頭をボートのパドルで殴りつけたり、銃を振りかざすまでになって(笑)」

――ドラマが進行するにつれて、登場人物が次々殺されていきましたが、サンが殺されたらどうしようと不安になったことはありますか?

「シーズン1でブーンが殺されたとき、まさかレギュラー出演者が殺されることになるなんて誰も予想していなかったから、ものすごくショックだった。残りの出演陣はみんなビクビクして、“次は誰だ”って言い合って。でも、シーズン2でサンが妊娠していることが発覚したとき、“良かった、これでサンは生き延びられる!”って思ったの。だって、アメリカのドラマで妊婦が殺される展開になるわけないもの(笑)」

――たしかにそうですね(笑)。

「その後は安心して仕事をしていたんだけど、サンが娘のジヨンを産んでしまってからは、また不安に襲われるようになって(笑)」

――いよいよシーズン6で終了となりますが、果たしてファンが納得する形で完結するのでしょうか?

「自分がデイモン(・リンデロフ)やカールトン(・キューズ)じゃなくてよかったとつくづく思う。製作総指揮の2人には、ものすごいプレッシャーがかかっているからね。でも、これまでのところ素晴らしい仕事をしていると思う。毎回、ものすごい展開を用意しているし、すでにたくさんの謎について答えを提示しているしね」

(小西未来)

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