LOST シーズン6 : インタビュー

■ジャック・ベンダー(製作総指揮)「ジョークのオチのようなエンディングにはならないから安心して」

※多少ネタバレあり
――「LOST」の演出を手がける監督として、エンディングはずっと前から知っていたんですか?

「だいたいの方向は理解していた。ただ、年月を経て、ずっと具体的な形に仕上がっていったけれどね」

――では、シーズン6ですべての謎が明らかにされるのですね。

「興味のある謎は人それぞれだから、説き明かされない謎もでてくる可能性がある。ただ、大きな謎や重要なテーマに関しては、すべて納得のいく形で提示される予定だ。ジョークのオチのようなエンディングにはならないので、安心してほしい。ある朝、ハーリーが目覚めると、すべてが夢だった、とか(笑)」

――それを聞いて、安心しました(笑)。

「最終シーズンは、これまでと同様、複雑で重層的に作られている。大きな謎については答えが明かされるが、いくつかの点については解釈の余地を残す。ただ、視聴者が満足できる形にはなると思うよ」

――「LOST」に出演する俳優は、エンディングはおろか次回の展開も知らずに演技をしているって、本当ですか?

「本当だ。彼らは必要最低限の知識だけでがんばってくれているよ。ただ、次の展開が分からないことには、演技の方向性を決められないような場合、役者がデイモン(・リンデロフ)やカールトン(・キューズ)に確認を取ることはある。“このあと、このキャラクターにはどんな事態に直面するの?”とね。ただ、脚本家が教えるのも最低限の情報だけだから、俳優のなかでエンディングを知っている人は誰一人としていない。みんなそれぞれ自分なりに想像しながら、演技に臨んでいるんじゃないかな」

――これまでの「LOST」を振り返ると、シーズン2の冒頭からシーズン3の中盤までが停滞期でしたね。

「それは、仕方のないことだったんだ。以前、『LOST』のプレミアでスティーブン・キングにも言われたよ。彼は『LOST』の大ファンで、最高のテレビドラマだと絶賛してくれたんだけれど、同時に“延命させないように”って助言してくれたんだ(笑)」

――ストーリーが尽きたら番組を終えるように、という意味ですね。

「その通り。とくに最初の2シーズンは、脚本家チームは苦労の連続だった。なにしろ、いつ番組が終了するか分からないから、ペース配分ができない。TV局側がようやくこちらの要求を呑んでくれたのは、シーズン3に入ってからのことだ。シーズン4以降、計48話で終了することに同意してくれて」

――シーズン3で登場したニッキーとパウロほど、ファンに嫌われたキャラクターもいませんよね。

「あれは、終わりが見えないなかで、ストーリーをもたせるために脚本家チームが思いついたアイデアのひとつだったんだ。二人とも素晴らしい役者だったけれど、キャラクター設定が表層的なうえに、演じているのが美男美女だったから、『LOST』の物語世界で浮いてしまったんだ」

――2人が死んでからは、脚本も素晴らしくなりますし、新キャラクターの導入も上手になりましたよね。

「新キャラクターを登場させるときは、必ずストーリー上の役割を持たせるようにしたんだ。ニッキー&パウロ以降の新キャラクターが全員うまく溶け込むことに成功したのは、『LOST』のなかで重要な役割を担っているからだ。ニッキーとパウロの場合は、クリスマスツリーのお飾りのような存在だったからね」

――「フェリシティの青春」で初めてJ・J・エイブラムスと組んで、以来、「エイリアス」と「LOST」とJ・Jが手がけるドラマの演出を手がけています。いま、J・Jが映画界に進出するなかで、彼が手がける映画を監督することに興味はありますか?

「J・Jとは今後のことについて話していて、映画企画もあればテレビの企画もある。面白い仕事であればなんでも挑戦していと思っているよ」

――個人的には、あなたは「スター・トレック2」の監督としてベストだと思うのですが。

「ありがとう。実は、その噂はネットでも流れているんだ。実際にはオファーをもらっていないんだけど」

――でも、脚本は「LOST」のデイモン・リンデロフが執筆しているんですよね。

「うん・デイモンと、アレックス(・カーツマン)とボブ(・オーチ)だ。『スター・トレック』の続編の件に関してはどうなるか分からないけれど、J・Jとは何らかの形で仕事をすることになると思うよ」

(小西未来)

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