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カテゴリ:テレ中のつぶやき

第7回 「LOST」最終シーズンがスタート 第1話でいきなり「黒い煙」の正体が明らかに

第7回 「LOST」最終シーズンがスタート 第1話でいきなり「黒い煙」の正体が明らかに

新たな仕掛けと謎解きでますます視聴者を虜に
新たな仕掛けと謎解きでますます視聴者を虜に
Photo:Everett Collection/アフロ

 2月2日、「LOST」シーズン6の全米放送がスタートした。ファンならご存じの通り、シーズン6は最終章である。全世界を熱狂させた壮大にして複雑なミステリーも、今年ついに完結するのだ。

 シーズン6は全16話が予定されている。初回と最終話は2時間スペシャルなので、放送時間は計18時間になるが、これまでに登場した幾多もの謎の種明かしをするためには、残された時間は多くない。だから、シーズン6に入ったとたん、種明かしモードに突入するのではないか、とぼくは予想していた。怒濤のごとく答えが提示され、大団円に突き進んでいくのだろう、と。

 その予想は第1話「LA X」で早くも覆される。現在と別の時間(過去や未来)を平行で描くのが「LOST」のスタイルだが、製作陣はフラッシュバックやフラッシュフォワードに次ぐ新たな話法を導入したのだ。物語は最終コーナーを曲がったところだというのに、大胆な仕掛けで視聴者を混乱に陥れてくれたのだ。

 アメリカのドラマの場合、途中から見始めてもなんとかついていけるように出来ている。とくに新シーズンの初回放送は、新たな視聴者を獲得するために、一見さんに親切な作りにするのが鉄則だ。しかし、「LOST」はその正反対を行く。LOST」に関する前知識を持たない人が「LA X」を見たところで、きっとなにも理解できないだろう。なにしろ、熱心なファンですら、混乱させられているのだから。

 念のために断っておくけど、「LOST」ファンにとって、混乱と退屈はイコールではなく、むしろ正反対である。頭がこんがらがるということは、それまでの考え方が通用しなくなっただけに過ぎない。つまり、新たな理論を組み立てる機会を与えられたということなのだ。物語の進む速度が極端に遅かったシーズン2やシーズン3の前半でも脱落せず、いまだに「LOST」に没頭している人は、おそらくこの知的な刺激の虜になっているのではないだろうか。たとえば、シーズン1でハッチが初めて登場したときのことを思い出して欲しい。あの時点まで、多くの人は島が無人だと思いこんでいたはずだ。だから、人造物であるハッチを発見して、混乱し、納得できる説明を探す(その答えは、シーズン2で明かされる)。死んだはずのジャックの父親が登場したときもそうだ(この謎は、未だに明かされていない)。「LOST」は壮大なパズルであり、最終シーズンに入ったからといって、そのスタイルは変わらない。むしろ、これまで以上に難解で複雑になっているのだ。

 製作総指揮のデイモン・リンデロフとカールトン・キューズをはじめ、「LOST」の脚本家チームのすごいところは、視聴者にありったけの忍耐を強いる一方で、熱心なファンにはきちんとご褒美を用意していることだ。たとえば「LA X」では、「黒い煙」(通称「ザ・モンスター」)の正体がいきなり明かされた。これだからファンは止められない。

 「LOST」最終話の全米放送は5月23日の予定だ。

小西未来 ( こにし・みらい )
71年生まれ。LA在住のフィルムメーカー。 CUTにて「映画の『科学と学習』」「ハリウッド通信」連載中。公式サイトはこちら)。 写真:小西未来