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カテゴリ:テレ中のつぶやき

第6回 米TV界で大騒動となった司会者バトル、その全貌とは?

第6回 米TV界で大騒動となった司会者バトル、その全貌とは?

多くの視聴者はコナン・オブライエン<br/>を支持
多くの視聴者はコナン・オブライエン
を支持
Photo:ロイター/アフロ

 1月22日放送の「ザ・トゥナイト・ショー」をもって、司会のコナン・オブライエンが番組を去った。コナンといえば、昨年6月にジェイ・レノを引き継いで、「ザ・トゥナイト・ショー」の新司会に就任したばかり。日本では馴染みがないかもしれないけれど、「ザ・シンプソンズ」や「サタデー・ナイト・ライブ」を担当した構成作家あがりのコメディアンで、「ザ・トゥナイト・ショー」の次の時間枠の「レイト・ナイト・ウィズ・コナン・オブライエン」で17年も司会を務めている。十分すぎるほどの人気と実力を持ちながら、どうしてこんなにも早く番組を去る羽目になったのだろうか?

 そもそものきっかけは、04年にNBCが交わした取り決めだ。コナンとの契約更改の際、09年から「ザ・トゥナイト・ショー」の司会を任せると約束したのである。同番組の司会は92年からジェイ・レノが担当していたが、そろそろ人気に陰りが見えていた。5年も前から司会を約束していれば、コナンを他局に取られることはないし、92年に勃発した「ザ・トゥナイト・ショー」の司会をめぐる争い――30年間に渡って司会を務めたジョニー・カーソンは後任にデビッド・レターマンを推薦したが、NBCはジェイ・レノを選択し、遺恨を残す結果となった。このときの舞台裏は、テレビ映画「トークショー」で詳しく描かれている――の再発を防ぐことができる。

 しかし、それから5年のあいだに、NBCにとって予想外の出来事が起きる。ジェイ・レノ人気が復活し、「ザ・トゥナイト・ショー」が高視聴率を維持したのだ。

 しかし、コナンに司会を約束している手前、09年にはジェイ・レノを「ザ・トゥナイト・ショー」から降ろさなくてはならない。が、人気者のジェイ・レノを他局に取られれば、NBCの脅威となってしまう。

 そこで、NBCは珍案を思いつく。それまではドラマやバラエティ番組を放送していた平日の夜10時枠に、ジェイ・レノの新トーク番組「ザ・ジェイ・レノ・ショー」を立ち上げようというのだ。かくして、NBCの平日夜の放送スケジュールは、トーク番組だらけとなる。夜10時から「ザ・ジェイ・レノ・ショー」が始まり、30分のニュース番組を挟んで、11時半からコナン・オブライエンの「ザ・トゥナイト・ショー」、12時半から「レイト・ナイト・ウィズ・ジミー・ファロン」、1時半から「ラスト・コール・ウィズ・カーソン・デイリー」という構成だ。

 もっとも視聴率が高いプライムタイム(午後8時から午後11時まで)にトーク番組をぶつけるのはどう考えても無謀で、業界関係者からは「もっとも馬鹿げたアイデアだ」と嘲笑されたが、NBCにはそれなりの根拠があった。大金を投じた新ドラマはどれも不発で低視聴率に喘いでいた。トーク番組は安上がりなので、低視聴率でも元は取れると考えたのだ。

 かくして、09年9月に「ザ・ジェイ・レノ・ショー」が放送開始。スタート時は豪華ゲストや物珍しさが手伝って高視聴率をマークしたものの、時間が経つにつれてじりじり人気を落としていく。さらに都合の悪いことに、コナンが司会を務める「ザ・トゥナイト・ショー」も視聴率を落としていった。前番組の影響をモロに受けた恰好である。

 今年1月、NBCは事態打開のため、新たな放送スケジュールを提案する。「ザ・ジェイ・レノ・ショー」を30分に短縮して、午後11時半にスタート。そして、「ザ・トゥナイト・ショー」をはじめとする深夜のトーク番組を、それぞれ30分ずらして放送するというものだ。

 しかし、コナン・オブライエンはNBCが提示した新スケジュール案を拒否した。「ザ・トゥナイト・ショー」は、60年以上の歴史を誇る伝統ある番組であり、その場しのぎで放送時間を変えるべきでない、というのだ。コナンとNBCの対決は他局のトーク番組やインターネット上でも大きく報じられ、コナンには多くの同情が寄せられた。しかし、NBCは強権を発動させ、コナンを解雇し、「ザ・トゥナイト・ショー」にジェイ・レノを復帰させるという形で事態の沈静化を図ったのである。

 1月22日の最終回にはトム・ハンクスをはじめ、ウィル・フェレル、スティーブ・カレル、ニール・ヤング、ベックなど豪華ゲストが登場し、コナンの番組降板を惜しんだ。コナンには他局からオファーが殺到しているというので、ぜひNBCの鼻を明かしてもらいたいものだと思う。

小西未来 ( こにし・みらい )
71年生まれ。LA在住のフィルムメーカー。 CUTにて「映画の『科学と学習』」「ハリウッド通信」連載中。公式サイトはこちら)。 写真:小西未来