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カテゴリ:テレ中のつぶやき

第2回 地球人を喜ばせる美しい異星人。女性主人公はオバマ大統領のメタファー!?

第2回 地球人を喜ばせる美しい異星人。女性主人公はオバマ大統領のメタファー!?

「LOST」のジュリエットが主人公のFBI捜査官に!
「LOST」のジュリエットが主人公のFBI捜査官に!
Photo:Splash/アフロ

  「V」といえば、80年代を代表するSFテレビドラマだ。地球侵略を目論むエイリアンとの戦いを描くSFサスペンスは、日本でも大ヒットした。当時、中学生だった僕も夢中になってレンタルビデオ店に通った記憶がある。

 その「V」のリメイクが、11月3日から全米放送をスタートした。正確にはリメイクではなく、リ・イマジネーションというやつだが、基本設定は同じ。世界各地の大都市上空に、突如巨大なUFOが飛来。なかから人間とまったく変わらない容姿をしたエイリアンが登場し、全人類に平和と友好を約束する。エイリアンはすぐに「ビジター(来訪者)」として歓迎されるものの、その真の目的は地球侵略だった、というもの。

 製作総指揮はSFミステリー「THE 4400」を手がけたスコット・ピータース。「LOST」のジュリエット役で知られるエリザベス・ミッチェルが主人公のFBI捜査官を演じている。レジスタンスに参加する牧師をジョエル・グリッチ(「THE 4400」)、ビジターの広告塔になるニュースキャスターをスコット・ウルフ(「サンフランシスコの空の下」)などが脇を固めている。

 「V」の最大の魅力は、テクノロジーで圧倒的な優位にある「ビジター」に対し、少数の勇敢な人間たちがレジスタンス活動を展開させていく、という点だ。オリジナル版のクリエイター、ケネス・ジョンソンは、ナチス・ドイツ政権下のユダヤ人をモデルにこの物語を生み出したと公言しており、ビジターの制服にはハーケンクロイツそっくりの紋章、レジスタンス活動の参加者のなかにはホロコーストの生存者を入れるなど、ナチスVSユダヤの構図を全面に押し出していた。オリジナル版の特撮は当時の基準からしてもかなりひどい代物だったが、バックボーンがしっかりしていたおかげで、視聴者を魅了することができたのだ。チープな円盤や着ぐるみが登場するものの、「V」の核はポリティカル・サスペンスなのだ。

 今回のリ・イマジネーション版では、ナチスVSユダヤの構図は薄められているが、SFらしく社会諷刺の要素がある。たとえば、リーダーのアンナをはじめ、ビジターはそろって完璧な美男美女ばかりで、エリザベス・ミッチェル演じる主人公の息子をはじめ、地球人の多くがたちまち虜になってしまう。ここらへんは、セレブリティに熱を上げている現代社会を反映しているといえる。

 さらに、アンナはオバマ大統領のメタファーだ、という指摘もある。ビジターを率いるアンナは、美しい笑顔を振りまき、口を開けば地球人を喜ばせるコメントしかしないが、その実は地球征服を狙う戦略家である。オバマ大統領も、国民を喜ばせることを言いながら、じっさいはアメリカを破滅に導いている。だから2人は一緒であり、「V」はアンチ・オバマドラマだというのだ。

 もっとも、この指摘をしたのは保守派で知られるFOX NEWSのコメンテーターたち。彼らによれば、「V」は、オバマ大統領に踊らされる「オバマ・マニア」たちを諷刺した素晴らしいドラマなのだという。

 はっきり言ってかなり強引で偏った意見だけれど――保守層がいかにオバマ大統領を嫌っているかが分かる――シーズン2への継続を狙う新ドラマにとって、こうした論争は歓迎すべきだろう。

小西未来 ( こにし・みらい )
71年生まれ。LA在住のフィルムメーカー。 CUTにて「映画の『科学と学習』」「ハリウッド通信」連載中。公式サイトはこちら)。 写真:小西未来