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第12回 ディスカバリー・チャンネルで異例の高視聴率「ベーリング海の一攫千金」

第12回 ディスカバリー・チャンネルで異例の高視聴率「ベーリング海の一攫千金」

欠点さえも魅力的な海の男たち<br/>Photofest/アフロ
欠点さえも魅力的な海の男たち
Photofest/アフロ

 7月13日に放送されたディスカバリー・チャンネルのリアリティ番組「Deadliest Catch」が、なんと850万人もの視聴者を獲得した。ケーブル局の番組としてはこの日のナンバーワンで、自然や科学のドキュメンタリーを専門とするディスカバリー・チャンネルにとっても歴代3位という大記録である。単なるドキュメンタリー番組が、どうして全米の注目を集めているのだろうか?

 「Deadliest Catch」は、日本でも「ベーリング海の一攫千金」として放送されている。ベーリング海のカニ漁を描くリアリティ番組で、漁船に住み込みをしている撮影クルーが捉えた迫真の映像と、海の男たちが繰り広げる人間ドラマが好評を博している。なにしろ彼らの漁場は世界でもっとも危険と言われるベーリング海だから、怪我や遭難、対立など題材には事欠かない。05年の放送開始以降、ゲーブル局のリアリティ番組としては異例のヒットを続けてきた。

 現在放送中のシーズン6は、これまでと桁違いの視聴率を獲得している。その主な要因は、コーネリア・マリー号の名物船長フィル・ハリスを中心に描いていることだ。ハリス船長は今年1月、陸揚げの際に脳卒中で倒れた。いったんは回復の兆しを見せたものの、2月上旬に53歳で息を引き取っている。

 今年4月から放送開始となったシーズン6は、従来通り複数の漁船をめぐるドラマを描きつつ、病床に臥したハリス船長にフォーカスを当てている。そして、船長の死を描いた最新エピソードが、最高視聴率を獲得したわけである。

 ぼくの好みからすると「Deadliest Catch」はあまりにも男臭いため、これまで熱心に追いかけていたわけではない。でも、シーズン6のいくつかのエピソードを見ただけで、人気の理由が分かった。とにかく登場人物が魅力的なのだ。腕っ節と度胸だけで荒波に立ち向かう彼らは、とても格好いい。しかも、彼らは実在する生身の人間である。死と隣り合わせの現場で、弱音や愚痴を吐き、怒鳴りあう彼らは欠点だらけの人間だ(たいていが、何らかの中毒を患っている)。それでも、中途半端なフィクションのキャラクターよりよっぽど輝いて見えるのは、真の海の男である強みだろう。

 そして、フィル・ハリス船長こそ、「Deadliest Catch」を象徴する人物だった。厳つい顔つきとは対照的に、心優しき大男で、同じ船で働く息子2人を愛している。ピエロのようにおどけてみせる一方で、重度のストレスから片時も煙草を手放せなかった。

 なにより驚いたのは、父が危篤のさなかにも、2人の息子たちが撮影の続行を許可したことだ。突然の知らせに当惑し、自暴自棄に陥る彼らは、決して模範的な子供ではない。しかし、最終的には父の最期を見取ることになる。彼らもまた、海の男なのだ。

小西未来 ( こにし・みらい )
71年生まれ。LA在住のフィルムメーカー。 CUTにて「映画の『科学と学習』」「ハリウッド通信」連載中。公式サイトはこちら)。 写真:小西未来