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カテゴリ:テレ中のつぶやき

第1回 子どもをダシにする素人の親たち。エスカレートするリアリティ番組人気に戦慄…

第1回 子どもをダシにする素人の親たち。エスカレートするリアリティ番組人気に戦慄…

自作自演で全米を騒がせた「気球一家」
自作自演で全米を騒がせた「気球一家」
Photo:Splash/アフロ

 先日、コロラド州で起きた「気球坊や(The Balloon Boy)」騒動はまだ記憶に新しいと思う。6歳児が乗った気球が流されたとの通報がきっかけで州軍まで出動した追跡劇は、米メディアで大々的に報じられた。両親による自作自演がバレてからは、トーク番組で恰好のジョークのネタになっているが、今回の騒動に僕は戦慄すら覚えた。エスカレートするリアリティ番組人気を象徴する出来事だったからだ。

 「気球坊や」の父親リチャード・ヒーネは、いまのところは無実を主張しているものの、自らが企画したリアリティ番組の売り込みのために事件を起こしたと見られている。彼と妻はどちらも演技学校の出身で、 ABCの「Wife Swap」というリアリティ番組に2度出演した経験がある。「Wife Swap」とは、生活習慣や階層のまったく異なる2つの家庭を取り上げ、主婦だけを2週間交換し、そこから生じる対立や葛藤を描くというイギリス生まれのリアリティ番組だ(番組の収録期間中、性行為は禁止されているので、念のため)。

 リチャード・ヒーネは科学調査ファミリーを主人公にした「The Science Detectives」というリアリティ番組を企画し、ケーブル局のTLCに売り込みをかけていた。また、「Wife Swap」の制作会社にも別の企画を持ち込んでいたというから、全米を揺るがす騒動で注目の的になり、リアリティ番組を実現させる計画だったのだろう。イカサマがバレた時点で彼の目論見はご破算となったが、TVに出るためだけにここまでやってのける人間がいるという事実を、改めて見せつけてくれた。

 ひとくちにリアリティ番組と言っても、演技や台本のないリアルさ重視の娯楽番組をすべて指すため、クイズ番組やトーク番組も含まれる。しかし、リアリティ番組という言葉を聞いて一般的にイメージするのは、「アメリカン・アイドル」や「プロジェクト・ランウェイ」のようなコンペティション形式と、特定の人物の生活を追うドキュメンタリー形式だろう。特に、ドキュメンタリー形式の場合は、容姿に恵まれず、スキルを何一つ持たなくても、何らかの個性があれば出演できるため、スポットライトを浴びたい素人たちが殺到するのだ。

 TVに出たがる人がいて、そんな彼らを観察したい視聴者がいるのであれば、とやかく言うべきじゃないのかもしれない。でも、「風船坊や」のように、子供をTV出演のダシにするのはさすがに行き過ぎだと思うのだ。

 たとえばTLCでは大家族の日常を追うリアリティ番組ばかりを放送している。双子と6つ子のゴセリン家が主役の人気番組「Jon&Kate Plus 8」をはじめ、12人家族が主役の「Table for 12」 、20人家族が主役の「18 Kids and Counting」など。いずれの番組も未見のため、各家庭がどういう理由で家族を増やしたのかは知らない。しかし、「Jon&Kate Plus 8」の夫婦のスキャンダルが、セレブ夫婦のようにタブロイド紙で報じられる現状を見る限り、彼らはスポットライトを浴びることに成功したと言える。

 そして、「オクトマム」として知られるナディア・スルマンがいる。彼女は8つ子を産んで全米の話題をさらったが、シングルマザーで生活基盤もなく、しかも、すでに6人の子供がいたことが発覚してから非難が殺到。しかし、そんな彼女ですら、1回かぎりの特番とはいえリアリティ番組「Octo- Mom: The Incredible Unseen Footage」に出演。名声と出演料を獲得することに成功している。

 リチャード・ヒーネも、気球なんかを作って騒ぎを起こすより、子供をたくさん作ったほうがよかったかもしれない。

小西未来 ( こにし・みらい )
71年生まれ。LA在住のフィルムメーカー。 CUTにて「映画の『科学と学習』」「ハリウッド通信」連載中。公式サイトはこちら)。 写真:小西未来